ごみ屋敷の小さな願い

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実はシティには、N氏のように、勤務先の近くに住んでいる人が意外と多いのである。 ある時、別の金融機関で働いている友人の為替ディーラーが「夕食をご馳走したい」と言ってきた。
彼が指定してきたレストランは、王室御用達で有名なデパート、ハロッズの近くにあった。 そのあたりは場所柄、しゃれた雰囲気の店が多い。
さて、ひとしきりワインを飲み、食事が終わって、私はヴィクトリア駅に行くために、タクシーを呼ぶようウェイターに頼んだ。 「タクシーを二台頼むよ」と私が言うと、その若い友人がすぐに「いや、一台でいいよ」「君はどうやって帰るの?」「歩いて帰るよ。この近くだから」聞けばスローンスクエアのフラットに住んでいると言う。
私は驚いた。 あのあたりは人気のあると訂正した。
る場所で、日本流にいえば億ションが建ち並ぶ高級住宅地だ。 しかし、彼は少し前までは、ロンドン橋の近くのフラットに住んでいたはずだ。
彼が言った。 「ほら、君も知っている通り、僕は転職しただろう。以前はリバプールストリートにオフィスがあったが、今はウエストエンドの方で働いているからね。引っ越したのだよ」「それは賃貸かい?」「オー、ノー。自分の金で買ったのだよ。今のロンドンなら買った方が得。まだ不動産の価格は上がるからね」「投資の目的かい?」「まあ、それもある。でも、それだけではないよ。君もそうだろうが、僕たちの仕事は朝が早い。毎朝、七時に会社には到着しなければならない。夜も遅くなることがある。僕の仕事はディーリングだ。心身ともにいつもベストの状態にしていないと、よい成果をあげられない。一瞬の判断で儲けのチャンスを失う。それどころか、大損をこうむることだってあるからね」「なるほど、なるべく疲労しないためにオフィスの近くにフラットを買ったというわけだ」「その通り。今日のように外で食事をして遅くなってもすぐに家に戻れる」「つまり、仕事上の便利さに加えて投資の果実を求め、高級住宅地にフラットを買ったってことか。ところでそのフラットはいくらだったの?」「買ったのは半年前で四十万ポンドだった」「だが、ミスター」と友人は言った。
四十万ポンドといえば日本円でざっと七千六百万円だ。 彼はにやりと笑って付け加えた。

「でも今なら五十万ポンド(九千五百万円)で売れる」「たった半年で十万ポンドも値上がりしたのかい?」「実はね、隣のフラットに住んでいるアラブ人が、僕にフラットを売らないかと言って来た。 五十万ポンド出すと言うんだ。

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